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このようにベータ値は、個別証券のポートフォリオ全体のリスクに対する寄与度を表している。
最適ポートフォリオの選択と資本資産評価モデル3、1最適ポートフォリオの決定。 多数の証券がある場合、投資家はどのようにポートフォリオを選択すべきかという問題について考えてみよう。
3つ以上の証券からなるポートフォリオの期待収益率と標準偏差がどうなるかを示したのが図58である。 前節でみたように2証券からなるポートフォリオはつの曲線上に位置するが、3つ以上の証券の場合には、ポートフォリオはいくつかの曲線で固まれた領域(投資機会集合)の中に位置する。
本章では、投資リスクを資産や証券の生む収益率の変動性と定義し、その統計的尺度として分散や標準偏差について説明してきた。 次いで、投資の必要収益率を決定するリスクとして市場リスク(分散不可能なリスク)を取り上げ、その尺度としてのベータ値について説明した。
また、これ以外に投資家の立場からのリスクのとらえ方の一例として「最低限何パーセントの収益率が得られるか」または「収益率がある水準以下に落ちる可能性はどれくらいか」といったダウンサイドリスクの考え方についても簡単にふれた。 このように、リスクという言葉は実際には様々な意味で用いられているので、ここで簡単にリスクという言葉の様々な用い方を説明し、上記のリスク概念との関連についてふれることにしよう。

まず、本書では、事業リスク(ビジネスリスク)と財務リスク(ファイナンシャルリスク)という言葉が出てくるが、これは企業が生む利益が変動する要因を企業の資産内容と資本構成の2つに分けて説明する考え方である。 これらのうち、事業リスクは企業の利益の変動性のうち、企業の事業内容(または資産内容、すなわちバランスシートの左側)によって説明される部分のことで、変動貨に比べて固定費の割合が多いと事業リスクが高くなる。
これに対して、財務リスクは資本構成(バランスシートの右側)が利益の変動性に与える影響であり、負債の利用度が高まれば財務リスクが高くなる。 一方、企業は事業資金をまかなうために、大きく分けて社{賓と株式というこ種類の証券を発行するが、これらの2つの証券のリスクは以上の企業の2つのリスクと外部経済環境(経済成長率や金利、インフレーションなど)の変動を受けて決まると考えることができる。
まず、社債については、企業の業績が順調である限り、投資家は満期まで保有すれば、決められた収益率(利子率)を得ることができる。 しかし、社債を満期以前に売却する場合には、社債の売却価格はその時の金利水準の影響を受けて変動するため、社債からの収益率も不確実になる。
これが債券の金利リスクである。 次に、事業リスクや財務リスクが大きい企業は、経済環境が悪化した場合に社債の元本や利子を払えなくなることがある。
これが貸し倒れリスク(デフォルトリスク)である。 社債の格付けはこの貸し倒れリスクを評価する試みである。
次に株式の収益容の変動性(総リスク)、企業の事業リスク、財務リスクと経済環境の変化の影響を受けで決定されると考えることができる。 また、外部経済環境のうち、特に証券市場全体の収益率の勤きが個別の株式の収益率に与える影響に注目したのが市場リスク(ベータ値)である。

本章で述べたように布場リスクは総リスクの一部であるが、特に市場リスクに注目するのは、ベータ値がその資産や証券の期待収益率を決定するという理論的な関係が成立するためである。 ベータ値がどのような要因によって決まるかについては、必ずしも理論的にも実証的にもはっきりしたことはいえないが、事業リスクや財務リスクはベータ値を決める要因の一部になっていると考えることができる。
企業の業績が悪化すると最終的には企業が倒慶するが、そのリスクは倒産リスクと呼ばれる。 企業が倒産すれば、社債の元利支払いはまずおこなわれず、株式は無価値になる。
なお、企業価値や証券の期待収益率の一般理論を組み立てる場合には、完全市場の存在とともに、倒産リスクがないことを前提として議論をおこない、その後に倒産の可能性を考慮に入れて、理論を拡張することが多い。 多数の証券からなるポートフォリオの期待収益率とリスク(標準偏差)も2証券の場合と同様に決まる。
期待収益率については2証券の場合と同様、各証券の期待収益率を証券の組み入れ比率で加重平均した値になる。 リスクについては、各証券のリスク(標準偏差)だけでなく、証券聞の相関係数の影響を受け、リスク分散効果が働くことになる。
では、図58で、投資家は投資機会集合のうち、どのポートフォリオを選択すべきであろうか。 図で、ポートフォリオPとその下方にあるQを比べた場合、両方の標準偏差は同じで期待収益率はPのほうが大きいので、リスクを嫌う合理的な投資家はPのほうを選ぶ。
したがって、投資家は投資機会集合のうち、曲線AM上にあるポートフォリオを選択することになる。 この曲線AMは、標準偏差を一定としたときに期待収益率が最大になり、期待収益率を一定としたときに標準偏差が最小になるという性質を満たすポートフォリオ群で、効率的フロンティアと呼ばれる。
ここで、投資家がリスクのない利子率で貸し借りができると仮定すると、投資家の選択すべき効率的フロンテイアは、図59で示されるように無リスク証券の点(0、「F)を通り、有リスク証券のみの場合の効率的フロンテイアに接する直線になる。 無リスク証券がある場合の効率的フロンテイアについて詳しくみてみよう。
効率的フロンテイアのうち、接点にあたるポートフォリオTは有リスク証券のみから構成されている。 また、Tより左側の部分は無リスク利子率での貸し付けとTを組み合わせたポートフォリオ、右側は無リスク利子率での借り入れとTを組み合わせたポートフォリオになっている。
では、投資家は効率的フロンテイア上のどのポートフォリオを選択すべきであろうか。 この問題を考えるためには、投資家がリスクに対して、どのような態度を持っているかを知らなければならない。

図510に示された直線ないし曲線は、無差別曲線と呼ばれ、その線上を動く限り、投資家が得る効用は同じであるという性格を持っている。 投資家のリスクに対する態度の違いによって、無差別曲線の形状は大きく3つに分かれる。
リスクを回避する投資家は、リスクが増えれば、同じ効用を得るためにより高い期待収益率を必要とするので、無差別曲線は右上がりになる。 リスクに対して中立の投資家は、期待収益率が同じであれば、リスクの大きさにかかわらず同じ効用を得るので、無差別曲線はフラットになる。
リスクを好む投資家は、リスクが増えれば、同じ効用を得るためには期待収益率がより低くてもよいので、無差別曲線は右下がりになる。 前述のように、通常の投資家はリスクを回避すると考えられるので、無差別曲線は右上がりになると考えられる。
ただし、個々の投資家によって、どれだけリスクを許容できるかという度合い(リスク許容度)は異なる。 リスク許容度が高ければ、リスクが増えても、それに見合う期待収益率の増加は少なくてよいので、無差別曲線はよりフラットになる。

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